東京都台東区「東上野」。今回は、通称“ぱちんこ上野村”と呼ばれているこの地の変遷について語っていきたいと思う。

東京都台東区東上野3-20-3。この地に建つビルが「エース電研AMビル」だった1990年代後半～2000年代前半に渡り、1Fに「アクア」という名のパチンコ店が入っていた。筆者がパチマガの新人編集部員だった当時、幾度となくデータ取りに赴いたホールである。
この店ではおもに新機種のデータ取りをするワケだが、なぜか「データ取りの前に店員に挨拶するとすぐ当たる」と先輩編集に教えられ、実際その通りにしたら投資500円で当たった想い出がある。
前回も述べたように、この東上野という地はパチンコメーカーのショールームが密集しており、新機種の展示会や発表会もよく行われ、おそらくその帰りに寄ったであろうメーカー名入り紙袋を手にした客も多かった。とにかく店に入ると、誰かしら業界人が打っていたイメージのあるホールだった。
しかし、当時数多くのホールが競合した上野アメ横界隈からはポツンと離れており、決してそこまでにぎわっていたり混んでいるワケではなかったと思う。

そして、やがて時代の波に飲まれ、アクアは潰れた。末期にはほとんどデータ取りにも行っていなかったと思う。まあ潰れるべくして潰れたと思うが、東上野という土地柄もあって“ぱちんこ上野村”のランドマーク的なホールであったといえるかもしれない。

そんなある意味“ランドマーク”だった場所が、2007年12月に生まれ変わる。アクア亡き後のビル1Fに「P･Players' Cafe（ピー・プレイヤーズカフェ）」が誕生したのだ。
エース電研がオープンしたこのカフェは、パチンコ・パチスロ機の展示スペースを備えており、自由に試打することも可能だった。コンセプトは“パチンコ好きが集まるカフェバー”。次第にエース電研のみならず、他メーカーの新機種発表会・展示会でも使用されるようになり（※当時は各メーカーとも大ホテルの大広間で大規模な新機種発表会をバンバン行う時代だったので、マイナータイトルor弱小メーカーの発表会・展示会に使用されていたという感は否めないが）、一時は某グラビアアイドルが店員になってたこともあったりして、相変わらず「上野村」のランドマーク的な場所にはなっていたと思う。今思えば、TAKAOの『CR弾球黙示録カイジ沼』や『CR一騎当千SS』、奥村の『CRブルーハーツ』『CR笑ゥせぇるすまん』、エース電研の『CR WWEこそがNO.1プロレスパチンコ機』等々…そこそこ話題の新機種発表会が行われていたよなあ。

そんな“上野村の新名所”も、2011年6月末に休業。その後、エース電研の筆頭株主だった「西陣」が引っ越してきて「西陣上野ビル」となる。
それまで西陣の機種取材・撮影等は麹町（平河町）の本社で行っていたが、これ以降1Fが西陣のショールームとなり、雑誌等の取材もこのビルで行うようになった。エース電研は元々パチンコホール向けの補給機器等を製造しているメーカーであったが、2000年よりaaa（トリプル・エー、ace active amusementの略）ブランドでパチンコ機を製造・販売するようになる（※西陣と業務提携の上、エース電研の企画・販売する台を西陣が製造）。
しかし、2014年に発売した『CR恋姫†夢想 乙女、入り乱れるのこと!』を最後にパチンコ機の製造・販売から撤退し、『モンキーターン』や『ベルサイユのばら』等の人気コンテンツについては西陣に継承してリリースされることになった。

3月1日の西陣廃業は今年最大の衝撃だった。折しも関東地方に『春一番』が吹き荒れた日であった。その数週間前に「西陣上野ビル」を訪れた時は、なんの前兆も感じられなかったのだが…。

コロナ禍の折、宣伝広報の方が冗談で「今年一番売れたのはアルコール消毒剤」と言って笑ってたのが、今となっては…ね。
廃業発表から8か月が経過した現在、かつての西陣ショールームはスーパーになっていた。西陣上野ビルの他の階はまだ工事中である。上野アメ横界隈のパチ屋がどんどん消えていき、今では4店舗のみという話を前回したと思うが、東上野の“ぱちんこ村”からもメーカーがどんどん消えていく時代になったのか…。＜つづく＞